二〇二二年(と読書記録の供養)
二〇二二年 (と読書記録の供養)
2022/1/4
元旦の朝は、PagerDutyからの熱烈コールで起床した。
そんな運用屋として素晴らしい年明けから3日経ち、昨年の振り返りをもとに、2022年、僕の今年の目標をちょっと考えてみた。
- 二〇二二年 (と読書記録の供養)
僕の今年の目標についてちょっと考えてみる
振り返りの総括をもう一度
2021年はイベントが重なって、勉強とアウトプットの両立ができなかった年だった。 イベントが重なるのは(ある程度は)仕方がない。ただ、目標は自分でコントロールすることができる。 昨年の目標は、ちょっと欲張り過ぎた。アウトプットは経験や勉強があってこそなので、その過程にそもそもパワーがかかるし、アウトプットに完璧主義を発揮して、二重のコストがかかった。イベントと重なってメンタルの健康を崩す結果となってしまった。
よくよく考えれば、特段頭の回転が早くもなく、コミュ障気味の人間なのに、仕事しつつ戸建て買って子供も産まれてこれだけやったのは、我ながらすごいことである。読めた本も32冊だけだったが、子供が生まれたばかりのタイミングや、うつ状態でダウンしていた期間を考えると、そんなものかなーと思ったりもする。
ただし、インプットもアウトプットも、もっと雑にするすべを体系的に学んでいれば、もう少し先に進めた印象もある。つまりローカロリーでなんとかするメソッドを身につけ、健康を保ちつつよしなにすることが必要ではなかっただろうか?
目標のダイエットを考える
そもそも、昨年の目標であった「勉強とアウトプットの両立」だが、勉強もアウトプットも範囲が大きいし、定量的に目標も定めていなかったので青天井になりがちだった。もうちょっと具体的に考えないといけないな、と思っていた矢先に、「今年は何をするか」ではなく「今年は何をしないか」を決めた方がいいというツイートを観測した。
戦略では「何をするか決める」よりも「何をしないか決める」ことが大切と言われています。だから「今年は何をするか」ではなく「今年は何をしないか」を決めた方がいいと思います。やらないことを決めた方が明確になりますよ。
— ぱやぱやくん (@paya_paya_kun) 2022年1月1日
戦略では「何をするか決める」よりも「何をしないか決める」ことが大切と言われています。だから「今年は何をするか」ではなく「今年は何をしないか」を決めた方がいいと思います。やらないことを決めた方が明確になりますよ。
目標を立てるにはやらないことを決めることが重要と言われれば、プロジェクトマネジメントの本にも(これは付録に出てくる)書いてあるのだ。それに、精神衛生上も良さそうだ。芋づるで、こんな記事も見つけた。
目標を達成するまでの制限時間というのを自分で定めていました。すると自動的に「やるべきこと」が明確になります。あとはただその「やるべきこと」をこなしていくだけです。 期限が決められた目標を達成するには、できるだけ「やること」の数を減らすべきです。それで余った時間や労力を、「やるべきこと」にまわす必要があるわけです。
やりたいことを削る?目標を定量的にズバッと決める?確かにそうだろうし、耳あたりは良いが実際にやってみようとすると、決断できない。これは難しい問題である。
振り返りの深追いと、何を削るか考える
実は僕は昨年、自分の強み3本軸を立てて、それに基づいて勉強とアウトプットを考えていた。僕の強み3本軸は次の通りである:
テレコム/ネットワーキング
英語
この三本柱を礎として、ネットワークシェル芸や、UNIX哲学のネットワークインフラへの応用といった「ぼくの考えた手法」をアウトプットし、UNIX哲学を啓蒙しようと目論んでいた。そのために、積んでる本をmindmupに起こして、notionを使ってタスク管理などをしていた。
しかし、積み本が多すぎ、サンクコストになっているという事実があった。完璧主義も災いして、読んだらまとめる!と考えていたので、notionで自分で作ったチケットが完了できない。notionでは、基本的に「勉強チケット」「読書チケット」「ブログチケット」「ジムで運動チケット」「オンライン英会話チケット」を作って、勉強とアウトプットの両立、その他諸々のタスク管理をしていたのだ。チケットを振り返ると、昨年読んだ本は32冊(チケットなんか起こしていない雑誌や漫画、再読やリファレンス、読みかけは除く)。ここはチケット化していなかったものも追加して、付録として本記事の最後に書いて供養しようと思う。
さらに、本当に自分がやりたいことが何なのか、マンダラチャートなどを作っていたが、これはやりたいこと・目指したいことが膨れ上がり、最終的に3つのマンダラチャートを作らないと、望む自分にならなかった。仕事の自分、生活の自分、趣味の自分の3つのマンダラチャートである。例えば、趣味で言うと、今まで取り組みに挫折したCPU自作/OS自作/言語自作とか。俗にいうコンピュータエンジニアの3大欲求である。そんな欲求を満たす時間が当然あるわけもなく、さらに子育てもしないといけない。自分の理想が高過ぎるのだろうか?元気なときはやりたいことが次から次に出てくるのだが。よくよく考えてみれば、もともと躁鬱の気があるのか?メンタルも病むのは必然だったかもしれない。
三歩進んで二歩下がる。
理想が云々と言い出すと、認知療法を試さねばなど新しい解決策を考える欲がムクムクと頭をもたげてくるが、それもまたコストである。3本柱は崩したくないけど理想を低くする、やることを膨らませないことが重要ではないだろうか。今までは、ネットワークシェル芸や、UNIX哲学のネットワークインフラへの応用といった守破離の「離」に拘っていたが、一旦守〜破に立ち帰りたい。これは個人的には大きな決断である。勉強とアウトプットの両立について、健康・育児・仕事に害をなさないように試す良い定量的目標はないか?ということを踏まえ、目標を設定してみることとする。
僕の2022年の目標
目標1:資格取得
フワッとした目標より一旦、基本に立ち返って「資格取得」という低めの目標設定にしてみることにする。積み本で「お勉強」せず、資格取得の過程で、本を逆引きすることにより、定量的な目標を定めつつ寄り道していこうという作戦だ。人間、試験前には他ごとが捗るのは必然であるので、我ながら良い作戦だと思う。自分の実力を勘案すると、目指す資格は下記か。
宣言しておけば後には引けないわけなので、まぁ一旦試してみることにする。1年間あるわけだし、ダメだったらまた振り返ればいいし、資格は取って損するモノでもないのだ。
目標2:アウトプットに向けてローコスト化するためのメソッドを学ぶ
何事をするにも、インプット・プロセッシング・アウトプットは必要なので、そこをローコスト化する方法をノウハウ本などで学んでみる。そして、資格取得なりの過程で寄り道したモノをアウトプットしてみればいいのだ。アウトプットについては、ストレスになるのが嫌ではあるがノルマを作って取り組んでみることにする。QCDはC>D>Qで、マサカリをいとわず月一ポストを一旦目指してみて、健康を害するようであれば減らしてみれば良いのだ。
目標3:メンタルやらない
散歩して日光を浴びる。ジム通いで運動/週1以上を続ける。自分の機嫌は自分で取る。
やらないこと
- NetOps周り、特にネットワークシェル芸やUNIX哲学のネットワークインフラへの応用について、公での啓蒙活動を一旦止める
- 新しいNetwork機材を買わない
- Kindleで新しい本を買わない
- 夜更かししない
- 当面は会社ブログやJANOGなどで公的アウトプットをしない
- Blogでも完璧なアウトプットをしない
僕の2022年の目標まとめ
付録:2021年に読んだ本の所感抜粋
昨年ちゃんと読んだ32冊の本の一部(+お遊びで読んだけど記録に残っている)について、書評的な雑記を書いていたので、ちょっと整形&リンクを貼ってここで供養しておく。
ネットワーク系
たのしいインフラの歩き方
DCマイグレーションに際して、キャンパスネットワークの移転が発生するためその参考に購入した。社内SEとしての、社内インフラに対する考え方がまとまっていて、読み物ではなく考え方を整理するためにも役に立つ。政治的なこととか調達系のこととか、本当に現場の人が書いた本で、知見が仕事にも活きる内容で面白かった。
シスコ技術者認定公式ガイド CCNP【BCMSN】編(試験番号:642-812J)
キャンパスネットワークに関する旧CCNPの教科書。昔、どこかに置いてあって知っていたが、キャンパスネットワークという題材でJANOG発表をする際に何かと悩み、そういえば体系的にまとまった本があったなと思い出し、「BCMSN」という謎5文字(これはBuilding Cisco Multilayer Switched Networksの略らしい)に辿り着くのに苦労しつつ中古で買った。全てを熟読はしていない(Cisco独自の箇所やSTP周りとか模擬練習は飛ばした)が、へーそうだったのか!な気づきが結構あった。発表資料にはあまり役立たなかった。
10ギガビットEthernet教科書
LANスイッチ内部のシリアルレーンから、OTN/WDMなどWANを含めて10Gbit Ethernetについて詳しく書いてある本。古い業界人は外付けトランシーバに接続するAUI/MIIケーブルを使ったことがあるかもしれないけど、その10G版(光トランシーバのデータシートを見たことがある人は、XAUIという単語を知っているだろう)について少しわかるようになる。オライリーの「詳説イーサネット」とはまた別のアプローチの資料として、一読しておくと低レイヤーに詳しくなれる。 www.amazon.co.jp
Network Programmability and Automation Fundamentals
Cisco Pressで安くなっていたので購入した。今時のネットワーク自動化の要素部品を、多寡はあれど実例を交えて説明している。Cisco流!なところも当然多い。Ansible+Jinja2やNETCONFの使用例は実例交えて今風な手法がわかる一方、今時ではありつつもNetmikoを使った原始的な手法などを知りたいと思うと物足りないかもしれない。個人的に一番面白かったのはChapter 2 Linux FundamentalsやChapter 20 Looking Aheadのところで、UNIX哲学やSSoT(Single Source of Truth)に言及している箇所は読み応えはないものの、「やっぱそうだよね!」と知っている人が書いているな、と感じることができた(何様目線だ)。
Fundamentals of EMS, NMS and OSS/BSS
テレコム関係ではEMSやOSS(Open Source SoftwareではなくOperation Support Systems)を知らない人は少ないと思うが、一方でそれが体系的にまとまっている邦訳書籍はない。洋書でもあまり見かけない中、この本は体系的にまとまっていて勉強になる。漫然とEMSを使っていても、eTOMとかあまり知らないので面白かった。規格系の話が多いが、OSSの章ではサービスプロバイダがなぜOSSを必要とするか、ビジネスモデルへの言及もあり、裏方の雑多なシステムだと思わずにSPの仕事をする人は読むべきだと思う。
プロジェクトマネジメント系
アジャイルサムライ
スクラムの勉強のため、この本が良いと聞いたので読んだけどあまり頭に入ってこなかった。読みやすい一方で、当然だけどソフトウェア開発にガッツリ入り込んだ例が多いのであまり共感ができなかった。スクラム開発全般というよりも、XP(エクストリームプログラミング)に重みを置いた書籍だという印象(というかそうだと思う)。文章のハイテンションさも、少しきつい。原文で読むと面白いのかもしれない。
SCRUMMASTER THE BOOK
今年、一番読み込んだ本。スクラムマスターはプロジェクトの秘書でも雑用係でもない。ただ、実現が難しい。ここでは深く語らない(長くなるので)が、スクラムマスターにロールチェンジして適応障害になった僕にとって、この本は救いになった。
ここはウォーターフォール市、アジャイル町
トラディショナルジャパニーズカンパニーなIT企業にアジャイルな新風を吹き入れる!という感じの本。ちょっと登場人物が誰も彼もイラつくのだけれど、今時な手法を硬直した組織にどのように入れていくか、なかなか読ませてくれた。理想例すぎて読んでそのまま役に立つ、という本ではないのだが、特に開発と運用の考え方の違いで起こる軋轢や、プロパー社員と外注メインのチームの軋轢など、アルアルすぎて読んでいて単純に面白かった。 雑談だけどジャパニーズトラディショナルカンパニー(JTC)が一般的らしい。ただトラディショナルジャパニーズカンパニーで正解でもある(ぐるぐる目)
雑多IT系/技術系
白と黒のとびら
オートマトン や形式言語について、物語の形式でほんとうに初歩から入門することができる。情報系の学部出身者であれば、学生時代に読んでおけば単位を落とすことがなかっただろうと後悔できること間違いなしである。主人公はクズと言うよりも、根性のないボーイなのだがその成長っぷりが読んでいて(と言うよりも、見ていてに近しいかもしれない)爽快で、読み物として面白いので作者の別の作品も読んでみたいな(積んでいる)。
シーケンス制御のキホン
Kindle Unlimitedで読んだ(はず)、手元に読後メモがない、忘れた
配電自動化システム入門
古くてマニアックな本。もともと電柱に添架されている通信系の配線を目で追っかけるのは好きだったが、電力系のアクセスライン(足回り)って、停電時にどのように復旧させるのだろう?PONとかでもノウハウがあるのに、電力でどのようにやっているのだろう?と興味があった。そこに「電柱マニア」と言う本を読んで、いてもたってもいられなくなり、購入してしまった。古い本なので今でもそうなのかはわからなかったり、陳腐化した内容などはあれど、電柱についている「おわん」や、どのように配電所から制御しているのかなど、技術的興味が満たされる一冊だった。
SF
プロジェクト・ヘイル・メアリー上下
アンディ・ウィアーは前作のアルテミスが微妙だったのであまり期待をせずに読んだが、ここ最近のファーストコンタクトものでは、一番刺さった。掛け値なしの傑作。
永遠の森 博物館惑星/不見の森 博物館惑星2/歓喜の歌 博物館惑星3
日本SF大賞に「歓喜の歌」がノミネートされていたので読んだ。まごうことなき傑作。好みのハードSFではなく、探偵小説に近しいと思うのだけれど、陰陽師的な一話完結であっさり読める割に、衒学的かつペーソス漂うドラマ風味で読後感が最高。永遠の森が一番面白かった。
その他雑に
たのしいムーミン一家
ムーミン谷の彗星の続きで惰性で読んだ。スノークがこの巻以降は出てこないというのは、本当なのだろうか?あとロジカとラッカセイっていう漫画に出てくる「ミセス・グレイス」ってモランが元ネタじゃないのかなと思ったけど違うかな。
週5でジムのサウナ通い
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Kindle Unlimitedで。短い自己出版本なのでここに記載するか迷ったが、思うところがあるので簡単に。サウナはクオリティよりも回数をこなしたほうがHSP(ヒートショックプロテイン)の分泌が増えて良い。ジムのサウナはジムのおまけのようなもので、本格的な施設に行くよりもコスパが良く良いと言う説。サウナファンを爆発的に増やした(はた迷惑な客も増やした)タナカカツキ氏も「サ道 心と体がととのうサウナの心得」でジムのサウナ通いで「ととのう」事に目覚めたことを書いている。 もっともなのだけれど、僕の経験知っているデメリットが記載されていない。それは、ジムのサウナに回数多く入ると高確率で水虫になるということ。スポーツジムの風呂場は清掃が行き届いていないことが多く、風呂マットは水虫の溜まり場。帰宅後にシャワーで足を洗うなどして気をつけたほうが良い。
供養完了。ここまで(凡そ)2時間 20分